みなさんは「限定承認」という言葉を聞いたことがありますか?
近しい身内を亡くした経験がある人の中には聞いたことがある人もいるかもしれませんが、多くの人にとって聞きなれない言葉ですよね。
しかしほとんどの人が、いつかは遺産相続という問題に直面します。
その際にこの手続きが最善の選択肢となる可能性もあるのです。
いったい限定承認というものがどんな手続きなのか、必要に迫られてからあたふたとしないように、今のうちにしっかりと把握してしまいましょう。

限定承認とは簡単に言うと、遺産相続手続きの方法の一つです。
遺産相続には限定承認を含めた、いくつかの選択肢があるのです。
そしてこの限定承認という手続きがどういったものなのかを理解するためには、まず「そもそも遺産相続とはどういったものなのか?」について、改めて理解する必要があります。

遺産相続というと「亡くなった人の財産を引き継ぐことができる」という、ある意味で前向きなイメージしか持っていない人が多いですよね。
人が亡くなってしまうことは悲しいことですが、お金が入ってくることだけを切り取って考えれば、経済的な意味でプラスになることもあります。
しかし、ときには遺産相続がトラブルを招き、マイナスに作用してしまうこともあるのです。

遺産相続によるトラブルと言えば、やはり遺産の取り合いをイメージする人が多いでしょう。
たしかに、資産家が亡くなった際に残された莫大な遺産を遺族で取り合いになることは、実際によくあることであり、ドラマだけの世界ではありません。
資産家でなくても、ある程度まとまった金額に相当する遺産があった場合は良く起こることです。
しかし、よくある遺産相続トラブルは、遺産の取り合いだけではありません。
それと同じくらいよくあるトラブルが、マイナスの遺産によるトラブルなのです。

もちろん相続人は亡くなった人のさまざまなプラスの財産を引き継ぐことが可能です。
しかしその逆もまた然りであることを忘れてはなりません。
相続人は負債などマイナスの遺産も引き継がなくてはならないこともあります。
もしも亡くなった方が多額の負債を残していた場合、相続したことによって自分の首が回らなくなってしまう可能性もありますよね。
相続税がかかる場合もありますし、遺産相続とは、必ずしも相続人にとって有益なものであるとは限らないのです。

故に遺産相続の際に相続人は、いくつかの選択肢の中から「相続の方法」を選ぶことができます。
どの選択肢で相続すれば良いのかをよく考えなければならないのです。

たとえば、亡くなった方がプラスの財産のみを残してくれたのであれば、単純にプラスもマイナスも全て無限に継承する「単純承認」の手続きをするべきでしょう。
しかし負債などマイナスの遺産のみを残して亡くなってしまった場合は、相続権を放棄する「相続放棄」の手続きをするべきなのです。

このようにプラスの遺産しかない、マイナスの遺産しかない、といった場合は、単純承認か相続放棄かになりますので、良くも悪くも悩む必要性がありません。
ある意味簡単ですよね。
しかし、プラスの遺産とマイナスの遺産がありそのバランスが微妙な場合は、単純承認、相続放棄、どちらが良いのか迷ってしまうことも多くなります。
遺産には継承後に価値が大きく変動する可能性のある不動産や株、証券なども含まれることもありますので、難しいところですよね。
そんな場合に選択肢の一つに加えられるのが、「限定承認」なのです。

限定承認とは、「プラスの遺産の範囲内でマイナスの遺産を弁済して、プラスの遺産が残った場合はそれを相続する」という方法です。
簡単に言うと、プラスからマイナスを差し引いて遺産を継承するということになります。
ある種の「損切り」であるといえるでしょう。

たとえば単純な例として、100万円の預金と10万円の借金が残されたケースを想定してみましょう。
この場合に限定承認の手続きをすると、100万円の預金のうちの10万円を弁済にあてて、残った90万円を継承します。
簡単な引き算ですよね。
結果的にプラスもマイナスも全て継承していることになりますので、単純承認と結果は同じになります。

では100万円の預金と110万円の借金があった場合はどうでしょうか?
この場合に限定承認の手続きをしていると、まずは100万円の預金を全て借金の返済に充てることになります。
しかし借金が110万円ですので、100万円では足りませんよね。
10万円分は債務超過になります。
単純承認の場合はプラスもマイナスも「全て」継承しなくてはならないので、当然この10万円の債務も継承しなければならなくなります。
つまり遺産を相続したことで損をしてしまうのです。
しかし限定承認をしていた場合は、この10万円の債務が免除されます。
結果的にプラスはゼロとなりますが、マイナスもゼロとなるので損はしません。

つまりこの限定承認は遺産のプラスマイナスの判断が難しい場合、遺産のプラスなのかマイナスなのか全く見当がつかない場合などに有効となるのです。
遺産相続は全部継承するか全部放棄するかの2択ではないのです。